大倉集古館が5年ぶりにリニューアルオープン
与謝蕪村は俳人ですが、本業は画家です
「春の海 ひねもす のたりのたりかな」
一日中ゆったりとした波が寄せては返す、のどかな光景が目に浮かぶ、これは私が好きな句です。
毎年、春先の仕事が忙しいときに電車に揺られていると、なぜかこの句と情景が頭をよぎり、穏やかな気持ちを取り戻します。
この句を詠んだのは、与謝蕪村です。
与謝蕪村は、松尾芭蕉・小林一茶とともに、江戸時代の三大俳人の一人です。
また俳人としてだけではなく、画家が本業だったようで、絵画を売って生計を立てていたようです。
そのような人だから、蕪村の句は絵画的なのかもしれません。
『夜色楼台図』という作品は、なんと国宝です!
前置きが長くなりました。
大倉集古館リニューアル記念特別展 「桃源郷展ー蕪村・呉春が夢みたものー」
理想郷としてこの「桃源郷」を主題としての作品展、それも大倉集古館のリニューアル記念、ぜひ行かなきゃと足を運びました。
呉春という人は、蕪村の内弟子として俳諧や絵画を学んだ人です。
私は今回初めて呉春という方を知りました、素晴らしい絵が並んでいました。
(以下の絵画画像はすべて、桃源郷展チラシからの抜粋です 展覧会・イベント | 公益財団法人大倉文化財団)
第一章 呉春「武陵桃源図屏風」 -蕪村へのオマージュ-
与謝蕪村 《武陵桃源図》左幅(2幅のうち) 江戸・安永10年(1781)個人蔵
桃の木の下で、おだやかな表情の老人が集う、この題材を与謝蕪村は妙に気に入っていたようで、晩年に何点も桃源郷をモチーフにした作品に残しているのだとか。
ゆったりとした時間が流れます。
呉春 《武陵桃源図屏風》(左隻部分) 江戸時代・18世紀 大倉集古館蔵
今回の目玉のようで、日本公開初の作品です。
蕪村を尊敬していた呉春もまた、桃源郷をモチーフとした作品を残しています。
この作品を描くに至った経緯を紹介するために、それまでの蕪村の作品が紹介されていたのではと感じました。
おだやかな色調の作品でした。
第二章 桃の意味するもの -不老長寿・吉祥-
《藍釉粉彩桃樹文瓶》景徳鎮窯 1口 清乾隆年間(18世紀)静嘉堂文庫美術館蔵
藍色に桃が映えていました。
焼き物ですが、使う時も見る方向が決まっていたのかな? 裏に当たる部分には、蝙蝠(コウモリ)が描かれていました。
桃も蝙蝠も、中国では長寿や幸福をあらわす「吉祥の文様」だそうです。
第三章 「武陵桃源図」の展開 -中国から日本へ-
河村文鳳《武陵桃源図屏風》(左隻)6曲1双 江戸時代(18世紀) 静岡県立美術館蔵
これも、武陵の漁夫が道に迷って、桃花が咲き乱れる仙境にたどり着きというモチーフですが、画家によって個性を感じました。
一瞬、水墨画かと思いました。
ここの2階へ行ったら、必ずこの大好きなロビーにでます。
ここで、足を休めながらボーっとするのは気持ちがいい!
10/14までの展示だった《桃林結義図》を見逃したのが残念でした。
大倉集古館名品展
1階の大倉集古館名品展では、横山大観『夜桜』が展示されていました。
横山大観《夜桜》(左隻) 6曲1双 昭和4年(1929)
横山大観の作品は力強く、たくましい生命感を感じます。
この夜桜も、それを感じずにはいられません。
私は最後に、この「夜桜」をみることができて幸せな気分で帰途につきました。