特別展「東山魁夷 日本美の象徴」
特別協力:東京国立近代美術館
千葉県市川市にある東山魁夷記念館
真っ直ぐに続く道、この道の先には何があるのか?
若かりさ日に、東山魁夷の『道』を見たときには目標に向かって、ブレることなく進むべきと示唆されているように感じました。
友人も東山魁夷が大好きです。
山種美術館で
東山魁夷の青・奥田元宋の赤(2019年11月2日~12月22日)
が始まったのですが、それを見る前に、彼がアトリエを構えていた市川市にある東山魁夷記念館に行きたいというのでついて行きました。
通常期は絵画の展示というよりは、リトグラフや木版画・複製画、また東山魁夷に関する資料などが展示されているそうです。
年に1回、特別展を実施しており、毎回よく練られた企画になっているようです。
11月3日(日)、千葉県市川市にある東山魁夷記念館に行きました。
京成中山駅で待ち合わせ、中山法華経寺を横切り、Googleマップを頼りに歩くこと15分。住宅地で目印がないため、スマホが頼りです。
記念館の横に、お住まいになっていたお宅もありました。
ぱっと見わかりにくいのですが、東山の表札がかかっていました。
このアトリエ付きの住居は、東京芸大時代の学友である、建築家 吉村順三の設計で、東山魁夷は1945年から亡くなる99年までこの地に暮らしていたそうです。
記念館は素敵な洋風の建物で、お庭もとてもきれいです。
『朝焼けの潮』のための スケッチ、小下図
今年の特別展は、年号が令和に変わったこともあり、皇室との関わりが深い内容になっていました。
2階の展示室では、大作『朝明けの潮』のスケッチと小下図が展示されていました。
この壁画は、吉村順三の設計による皇居新宮殿新築に伴い依頼されたものです。(東山魁夷のご自宅もこの方の設計)
海外からも含め、客人求めて最初に迎える長和殿「波の間」に掲げられており、縦約3.8m、横約14.3mの大作です。
新宮殿に入り、この壁画をご覧になると「東山ブルーが描く日本美」に感動されたのではと思います。
この壁画を描くための
スケッチ40枚と、小下図は東京国立近代美術館に収蔵されているそうですが、この特別展のため全て借り受けているそうです。
展示替えがあり、今回のスケッチは半数の20枚でした。
スケッチでは、いろいろな波の瞬間、岩に当たる瞬間を捉えたもの、また朝焼けの色を求めていろいろな青で描かれています。
群青色から緑に近いもの、またいろいろな構図で試しているのが伝わってきます。
それがだんだんと、小下図になっていく制作過程を眺めていると、絵が作られていく工程がよくわかります。
東山魁夷が海という景色を通じて、日本の美を追い求めているのを痛感しました。
東山魁夷という画家は助手をおかず、この大作も色は全て一人で描いています。
2年強かかったのもうなづけます。
制作風景の写真が展示されていますが、こんな風にして大きな壁画を描いていたのかと興味深かったです。
東山ブルーで描く日本の景色は本当に美しい。
その他の展示
この他に、「京洛四季」も出展されていました。
作家の川端康成から、「京都は今描いといていただかないとなくなります。京都のあるうちに描いておいてください」と言われて臨んだシリーズです。
京都出身の私にとっては、今の京都ではなく、小さい頃に見た懐かしい風景と出会えました。
北山杉に雪か積もっている『北山初雪」を見ながら故郷に思いを馳せました。
語彙料が乏しく、ふさわしい言葉がみつかりません。
また、『雪の石庭』は数年前に寒さで凍えそうになりながらみた風景でした。
その他、有名なものでは『夏に入る』
多くの竹が、まっすぐに伸びているこの作品。
今上天皇が子どもの頃に、この絵について東山魁夷が説明している写真や手紙もありました。
そして、帰り間際に『道(試作)』の前で立ち止まりました。
じっくり向き合いました。
真っ直ぐだけと、登ったり下ったりしているのか?
真っ直ぐに延びているのですが、奥の最後の方だけ少し右に曲がっているようです。
これが人間の生き様なのか、と54歳の目で見ると、若い頃とは違った気持ちになりました。
鑑賞後に、併設のカフェでコーヒーを飲みました。
外の席でお庭を眺めながら、道をモチーフにしたカップで飲むコーヒーは格別でした。
特別展「東山魁夷 日本美の象徴」
- 前期:10月26日(土)~11月24日(日)
- 後期:11月26日(火)~12月22日(日)
展示替えがあります。